翻訳家による翻訳できない言葉の話

日本語と英語の狭間で呻吟し、言葉を超えたものに思いを馳せる翻訳家のエッセイ

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わたしの英語学習法(4)

 
 わたしが選んだ英語学校は、スイスの財団が運営しているユーロセンターという学校でした。ユーロセンターはスイス以外の国からの学生を全体の一割までと決めていました。当時の日本は好景気で、英語学校はどこも日本人の生徒がひしめいていたので、日本人が少ない学校ということで、ユーロセンターを選びました。

 クラス分けのテストでは、わかる問題もわざとわからないふりをして、1割か2割は記入しませんでした。日本人は試験問題を解くことに慣れているので、本気でクラス分けのテストに挑んで好成績をとると、実力よりも上のクラスに入れられてしまってあとで苦労すると、ユーロセンターの東京事務所のスタッフから教わっていたからです。

 実際、スタッフの言ったとおりでした。わたしはたしか上から2つ目か3つ目の上級クラスに入ったのですが、ヨーロッパの学生たちは英語を話すスピードも読むスピードも日本人とは比べものにならないくらい速いという印象を受けました。また、ヨーロッパの言語は英語に似ているせいか、彼らは上達するのも日本人より速いようでした。

 同じクラスには日本人の生徒がほかにふたりいました。ふたりとも有名大学の卒業生で、ひとりは英文学が専攻でした。わたしたちは話し合って、お互いに日本語をいっさい話さないことに決めました。ユーロセンターも生徒にそのように勧めていましたので、上級クラスだったこともあり、スイス人もドイツ語で話したりせずに、みな英語を使っていました。

 学校の授業は朝から午後2時か3時ごろまでありました。それが終わるとわたしはLL教室へ行き、聴きとりの練習をしました。LL教室は5時で閉まるので、5時になると図書館へ移動します。そして図書館が閉まる6時まで新聞や本を読みました。

 ホームステイをしていましたので、帰宅後も寝るまでずっと英語です。イギリスに到着した時点から、わたしは日常会話には不自由しませんでした。日本で英会話学校に通ったことはなかったのですが、すんなり英語を話すことができました。日常会話のレベルはすでにクリアしていたようです。

 これにはラジオの英語講座だけでなく、英語の本を辞書を引かずにたくさん読んでいたことが役に立ったように思います。辞書を引かずに読むことの利点は、わかるところだけを気にしながら、英語をその流れのままに理解する癖がつくことです。

 話をしているときに辞書を引いている暇はありません。上級クラスでしたので、授業はほぼナチュラルスピードの英語でずんずん進んでいきます。いちいち立ち止まって頭のなかで日本語に翻訳している暇などないのです。英語をその語順のまま理解していくことがリスニングのコツですが、多読によって、そのコツを知らず知らずのうちに身につけていたような気がします。

 また、わかることだけを気にすることも大切です。日本人は学校の授業やテストでわからないことに注目する癖がついているせいか、英語を聴いているときでも英文を読むときでも、わからない部分に気をとられがちではないでしょうか。わたしはわかることだけに注意を向ける癖をつけていたことが役に立ったように思います。

 授業中にプリントなどを読むときにも、多読の経験が役に立ちました。日本人は英語の読み書きはできるけれど話せないとよく言われますが、読む力も書く力もヨーロッパの学生に比べれば格段に劣ります。同じクラスのふたりの日本人は、ほかの学生の読むスピードについていけずに苦労しているようでしたが、わたしはヨーロッパの学生と同じ速度で英語を読むことができました。

 これも自慢していると受けとらないでほしいのです。ほかのふたりの学生は優秀な方たちでした。もしわたしと同じように多読の経験があれば、少なくともわたしと同程度か、たぶんわたしよりも速く英語を読むことができたでしょう。

 ある日、図書館があと15分くらいで閉まるというときに、同じクラスだった日本人のAさんが、「まだ帰らないの?」と(もちろん英語で)声をかけてくれました。わたしはあと数ページで小説を読みおえるところだったので、「これ読みおわったら帰る」と答えました。

 すると、一流大学で英文学を専攻していたAさんが、「えーっ、信じられない。わたし英語の本1冊全部なんて、読んだことない」と言ったので、こっちが驚きました。わたしは大学へ行かなかったので、英文学科の大学生がどんな勉強をしているのかわかりません。それでも、日本人は英語の知識を詰め込むばかりで、インプットはできているけれどアウトプットができていないというのは嘘だと思いました。日本人はインプットも圧倒的に足りていないのではないでしょうか。

 これは25年前の話ですが、大学で英語を教えているイギリス人の友人は、大学生の英語力は15年ほど前に比べても落ちていると言っています。英文学科の大学生は小説を原文で何十冊も読んでいるでしょうか。英文がすらすら読める程度の英語力があれば、TOEICのためにわざわざ勉強する必要はないはずなので、たぶんいまでも日本人は英語のインプットが足りていないだろうと思います。

 このことも日本人を批判したりけなしたりするために書いているわけではありません。外国語が堪能になったわたし以外の人たちの例をあとで書きますので、そのときに日本人の一般的な英語の学び方を思いだして比較していただければと思います。

 ユーロセンターでは辞書も参考書も、すべて英語で書かれたものを購入するように指導していました。平易な英語で書かれた英語学習者のための優れた英英辞典がたくさん出版されています。

  また、英文法の参考書もすばらしいものがあります。わたしが愛用していたのはPractical English Usageという本で、その後改訂されて内容が新しくなっています。文法書というよりは、タイトルにあるとおり、英語の使用法がわかる語法辞典です。英検2級レベル以上であれば、この本を使いこなせると思いますが、これがむずかしい方はBasic English Usageのほうがいいかもしれません。下にアマゾンへのリンクを貼っておきます。



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May

Author:May
翻訳家。フリーランスになって24年。出版翻訳専門。京都府在住。

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