翻訳家による翻訳できない言葉の話

日本語と英語の狭間で呻吟し、言葉を超えたものに思いを馳せる翻訳家のエッセイ

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わたしの英語学習法(5)

  イギリスの英語学校に入学後、最初の3か月はおもしろいように英語力が伸びました。中学生のころから溜めこんできた英語の知識を実際に使うことによって、使い方を身につけていっているのが感じられました。上達しているのが、毎日実感できました。最初の3か月のコースが終了すると、わたしはまた新たに3か月のコースに申し込みました。

 ところが4か月目に入ると、ぱたりと進歩が止まりました。本を読んでもLL教室で勉強しても、ちっとも上達しません。3か月で日本へ帰るべきだったと、わたしは後悔しました。溜めこんできた知識を実際に使いこなせる段階に到達したら、さらに上のステップへ進むためには、新たな知識をまた一から溜めなければならないことに気づきました。また、知識を溜める手段として、英語学校はふさわしくないことにも気づきました。

 英語学校は、英語を母国語としない外国人に英語を教える場です。教師は外国人の話す、ちょっと奇妙な英語に慣れています。また、外国人にとってわかりやすい英語を話します。わたしは4か月目からは一番上のクラスにいたのですが、たとえ一番上のクラスにいたとしても、英語学校の英語はしょせん「外国人のための英語」です。たかが知れていると言いますか、ネイティブレベルの英語とはまるでちがいます。

 もう一段階上達するためには英語学校に籍を置くのではなく、ネイティヴスピーカーと肩を並べて大学で学ぶしかないと思いました。けれど、わたしにはそのお金がまずありませんでしたし、そもそも目的はネイティヴスピーカーのように英語を操れるようになることではなく、翻訳家として仕事ができるだけの英文の読解力を身につけることでしたので、その目的は果たせたと感じて、渡英後半年で帰国しました。

 帰国してから2年ほど経ったころ、英語学校で最初の3か月間同じクラスにいたAさんに東京で会いました。有名大学の英文学科を卒業した女性です。英語学校にいてももう英語力は伸びないと感じたとわたしが言うと、Aさんもまったく同感だと言っていました。

  Aさんはわたしが帰国してからも英語学校に留まり、ケンブリッジ英語検定のCPEを2回受けて、2回とも落ちたと言っていました。当時ケンブリッジ英語検定は半年に1度しか実施されていませんでしたので、Aさんはわたしが帰国後も、英語学校に1年ほど籍を置いていたことになります。

  渡英した時点から数えるとイギリスの英語学校で1年以上も学んだにもかかわらずCPEに合格できなかったAさんは、「わたしは英語の才能がないんだ」と諦めて学校をやめました。そして、イギリス人が通うポリテクニックのフランス語講座を受講したのです。ケンブリッジ英検の試験勉強はやめてしまいました。ところが半年後、「だめでもともと」という気持ちで英検を受験してみたら、今度は合格したというのです。

 Aさん自身は、英語学校で英語を母国語としない外国人に囲まれて授業を受けるのではなく、イギリス人と一緒にフランス語の授業を受けて、イギリス人ばかりとつきあったことによって英語力が伸びたのだと思うと言っていました。

 英語学校は当然のことですが、英語を「教え」ようとします。そして学校に通う生徒たちは、学校で英語を「教え」てもらおうとします。けれど言語というのは、人から教えてもらえる部分がきわめてかぎられているのではないかと、わたしは感じています。イギリスで暮らし、英語学校に通って、毎日授業を4時間も5時間も受ければ、当然英語が上達するはずだと思うでしょう。ところが、人から教わることによって英語を学ぼうとする方法は、それほど効率がよくないのかもしれません。

 英語学校に通っていたとき、AさんはCPEに合格するために勉強していました。試験勉強をしていたわけです。英語を「使う」のではなく、英語を勉強していました。一方でフランス語を学んでいたときは、英語を「使って」フランス語を勉強していたのです。日本人が中学、高校、そして多くの人が大学でも英語を学ぶにもかかわらず英語ができるようにならないと言われますが、語学を「勉強」しようとするからできるようにならないのではないかという気もします。

 外国語が堪能になった人たちの学習方法を調べてみると、以上の疑問に対して答えらしきものが導きだせるような気がしています。彼らの学習法をご紹介する前に、次回は英文和訳を専門としてきたわたしが、久しぶりに英文を書いてみたときのことをお話ししたいと思います。

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プロフィール

May

Author:May
翻訳家。フリーランスになって24年。出版翻訳専門。京都府在住。

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