翻訳家による翻訳できない言葉の話

日本語と英語の狭間で呻吟し、言葉を超えたものに思いを馳せる翻訳家のエッセイ

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GlobishとCore English

 
  Jさんは日本人でもめったに使わない表現も使いこなすことができます。Jさんが「外道」という言葉を使ったときは驚きました。「金的する」という表現を使ったこともありますし、「インドア派」「ヤンキー」「下ネタ」など、教科書だけで日本語を学んだ人は絶対に知らないような言葉もlang-8の日記に書いています。

 6つや7つの子どもが大人びた表現を使って、大人を驚かせることがあります。Jさんの日本語はそれに似たところがあるように思います。7歳の子どもは新聞を読むことはできないかもしれませんが、語彙はとても豊富です。流行語は大人よりも早く身につけますし、「外道」というような古めかしい表現も、テレビや漫画、ゲームなどから仕入れてきて、上手に使います。

 日本のお笑い番組を理解したかったJさんにとっては、こんなふうに語彙を豊かにするのはぜひとも必要なことだったかもしれません。言葉に対する感覚が日本人並みに磨かれていなかったら、言葉で笑わせるお笑いは理解できないでしょうから。

 英語を学ぶ日本人に置き換えても、同じことが言えると思います。もし映画や小説、スタンダップコメディなどを英語のまま理解したかったら、実際に英語で映画や小説、コメディなどを見て、そこで使われている表現を学ぶしかないでしょう。

 ただ、英語を学ぶ理由は、人それぞれです。ビジネスで英語が必要なのであって、英語で映画を理解したいとまでは思っていないという人もいるのではないでしょうか。海外旅行に出かけたときに英語で買い物がしたいだけだという人もいるでしょう。

 そういう人にとっては、英語のスラングやめったに使わないような凝った表現を身につけようとするのは時間とエネルギーの無駄かもしれません。ビジネスでも旅行でも、英語でコミュニケーションをとる相手は英語のネイティヴ・スピーカーとはかぎりません。英語を母国語としていない国の人々と英語でコミュニケーションをとる機会のほうが、ネイティヴ・スピーカーと話す機会よりもはるかに多いという人もたくさんいるでしょう。

 相手も英語のネイティヴ・スピーカーでない場合は、流暢な英語をネイティヴ・スピーカーのように使いこなすよりも、シンプルな表現でわかりやすい英語を話したり書いたりしたほうが通じやすい場合があります。また、相手もシンプルな英語しか使わない場合も多いものです。

 英語で小説や映画を楽しみたいわけではなく、あくまでも実生活で英語を使うのだという方は、よく使う簡単な文型や言い回しだけを何度も繰り返して徹底的に頭にたたき込む勉強法のほうが効率がいいかもしれません。『Antimoonの6原則(辞書)』という7月14の記事でご紹介した英語学習者のための英英辞典は、中学終了程度の語彙があれば理解できるように、1600語で語義を説明しています。収録語数は1万2000語ですが、その1万2000語の意味を1600語で説明しているのです。つまり、基礎的な1600語の英単語を知っていれば、1万語以上の言葉を言い換えられるということです。

 何年も英語を勉強しているのに話せるようにならない人は、自分の知っている英語を使いこなすことができていません。何度も書いてきましたが、「弱り目に祟り目」って英語でなんて言うんだろうと頭を悩ませ、自分が知っている日本語を全部英語に置き換えて、それらの英語表現をすべて知らなくては英語が喋れないと思っている人は、永遠に英語ができるようにならないでしょう。

 めったに使わないような英単語を憶える必要はありません。自分が知っている英単語を効果的に使って、文章を作れるようになればいいのです。また、相手が言っていることがわからなければ、聞き返せばいいのです。繰り返してもらっても理解できなかったら、もっと簡単な英語で言い換えてくださいと頼めばいいのです。

 大切なのは、相手に質問ができること、簡単な英語に言い換えて説明してもらったときに、その説明が理解できることです。それだけの英語力があれば、旅行やビジネスを乗り切ることができるでしょう。

 発音に関しても、ネイティヴ・スピーカーそっくりに喋る必要はないと思います。以前にも書きましたが、RとLを正確に発音するよりことよりも、アクセントの位置や英語のリズム、イントネーションを身につけることのほうが役に立つと、わたしは感じています。もちろん、英語の音が好きで、真似することが苦にならない人は真似をすればいいわけですが、なかには英語を話すことに興味があるわけではなく、必要だからしかたなく英語を学んでいる人もいるでしょう。そういう人は、最小限の努力で通じる英語を身につけたいと思うのではないでしょうか。

 Globishをご存じですか? 使用頻度の高い1500個の英単語と簡単な文型を使って英語を使いこなそうという考え方で開発された英語です。Globishの教科書もありますので、興味のある方はご覧になってみてはいかがでしょうか?
http://www.globish.com/?lang=ja_utf8

 立教大学の鳥飼玖美子教授は朝日新聞のインタビューでCore Englishを紹介しておられます。Core Englishはまだ開発途上のようですが、ネイティヴ・スピーカーのように英語を話そうとするのではなく、英語を母国語としない人たちが、少ない労力で英語を使ってコミュニケーションをとれるようになることを目標にして、研究が進められているようです。英語の記事がここにありますので、興味のある方はお読みください。
http://www.asahi.com/english/TKY201101210361.html

 このインタビューは日本語で行われ、2010年10月20日に朝日新聞の15面に掲載されたもののようです。日本語の記事を、そっくりそのままブログに転載している方がおられますので、検索すれば見つけることができると思います。

  GlobishやCore Englishを学んで基本的な英語力をひとまず身につけておけば、ビジネスで特に必要な語彙や表現については、それに追加する形で学ぶことができるでしょう。自分がよく使う表現だけを、基礎的な英語力につけ足していくやり方のほうが、文学的な表現やめったに使わない諺などをまんべんなく学ぶ方法よりも効率がいいのではないでしょうか。

 なにに英語を使いたいのか、どのように使いたいのかによって、学び方は違ってくるだろうと思います。

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May

Author:May
翻訳家。フリーランスになって24年。出版翻訳専門。京都府在住。

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