翻訳家による翻訳できない言葉の話

日本語と英語の狭間で呻吟し、言葉を超えたものに思いを馳せる翻訳家のエッセイ

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Butで始まる文章

 わたしはButやAndで文章を始めることがあります。ButやAndで文章を始めてはならないと教わった方もおられるでしょうね。わたしもイギリスの英語学校でそのように教わりました。けれど実際には、プロのライターや小説家が書く文章でも、But やAndで始まっているものがたくさんあります。

 Lang-8という、語学学習者の相互添削サイトをご存じですか? わたしはそこの会員になって、ときどき英文を書いてネイティヴ・スピーカーに添削してもらっています。そのサイトのアメリカ人のメンバーで、長年ライターとして働いた経歴を持つ方がおられるのですが、その方は、英語学習者の書く文章を添削する英語のネイティヴ・スピーカーのなかに、AndやButで始まる文章をいちいち指摘して書き直す人たちがいるのを見て憤慨しました。そして、AndやButで文章を始めてもかまわないことを証明するために、『ニューズウィーク』の2011年2月21日号を調べて、AndやButで始まる文章を数えました。結果はAndで始まる文章が23で、Butで始まる文章が27でした。

「And~~. And~~. And~~」あるいは、「But~~~. But~~~. But~~」というように、同じ接続詞を繰り返すと文章が単調になりますし、幼稚な印象を与えるのはたしかです。これは日本語でも同じですよね。「それで~~。それで~~。それで~~~」とか、「でも~~。でも~~。でも~~」と同じような文型を繰り返すと、読みにくくなります。

 文章に変化をつけるためにButをHoweverに書き換えたり、AndをMoreoverやIn additionなどで置き換えたりすることには意味があると思います。ただ、HoweverやMoreoverはButやAndよりもやや堅苦しい表現ですから、くだけた内容の日記には似合わないでしょう。

 日本人は国語の授業で作文を添削される機会があまりないように思いますが、どうでしょうか? わたしは読書感想文以外には、ほとんど作文を書いた記憶がありません。

 英語のネイティヴ・スピーカーは、英文の書き方を学校でずいぶんうるさく言われるようです。けれどその教え方が適切なのかどうか、よくわかりません。たとえば、「これはテーマとは無関係だから削除しなさい」というような添削のしかたを、先生方はよくされるようです。

 わたしもLang-8で書いた日記の一部を、「テーマとは無関係だから削除すべき」と、アメリカ人の大学生に指摘されたことがあります。以下の文章です。
The former President Bush was often ridiculed for his Texan drawl among other things, but I didn’t find his English particularly funny.

 この大学生は “among other things”という部分を、”irrelevant information” だから削除すべきだと指摘しました。 “among other things” はジョークなのに。

 日本語で書くと、「ブッシュ元大統領はいろんなことで馬鹿にされていたけれど、テキサス訛りでもしょっちゅうからかわれていた」という順番になりますが、英語では「ブッシュ元大統領はテキサス訛りをしょっちゅうからかわれていた。ほかにもいろんなことで馬鹿にされていたけれど」となります。「ほかにもいろんなことで馬鹿にされていた」という部分が、among other thingsにあたります。

 ここは普通であれば、読んでいて笑いを洩らす箇所なのです。実際、別のアメリカ人はわたしのジョークを理解して、このくだりでにやりと笑ったと言っていました。でも添削した大学生は、普段自分が先生から添削されているとおりに添削しようとしたのでしょう。論旨を簡潔に述べて、不必要な情報はカットするという英文の書き方をたたき込まれているので、他人が書く英語を添削する際も、そのようにするのでしょうね。

 社会経験が少ない若い人ほど、このような杓子定規な添削をするケースが多いように思います。英語を母国語とする国の大学などへ進学する人は、But やAndを文頭に使わないとか、テーマと直接関係のない情報は(たとえそれがエッセイをおもしろくしたとしても)カットするという英文の書き方を学んだほうがいいかもしれません。くだらない決まりごとだとは思いますが、教師がそう言うのであれば、学生としては従うしかないでしょうから。

 けれどそういう目的ではなく、普通に英文でメールや手紙を書いたり、英語で自分の考えを表現できるようになりたい人は、AndやButを文頭に使っても、なんの問題もないと思います。

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プロフィール

May

Author:May
翻訳家。フリーランスになって24年。出版翻訳専門。京都府在住。

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