翻訳家による翻訳できない言葉の話

日本語と英語の狭間で呻吟し、言葉を超えたものに思いを馳せる翻訳家のエッセイ

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子どものように

 日本語を学んでいる韓国人女性、Hさんが、文章のなかに「出方」という表現を使う場合と「態度」という表現を使う場合では、文章の雰囲気はどのように変わりますかと、語学学習サイトで日本人に尋ねました。

それに対してわたしは、「出方」と「態度」は文章の雰囲気を変えるだけでなく、言葉の意味そのものが違いますと説明しました。

Hさんによると、辞書を引くと「出方」と「態度」は同じような意味だと説明されていたので、意味は同じで雰囲気だけが違うと思い込んでいたとのことでした。

Hさんのそのコメントに対してわたしが書いたアドバイスは、英語学習者にとってもヒントになるかもしれませんので、ここに書き写します。
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言葉の意味を知りたいときは、意味を説明してもらうよりも、その言葉を含む文章をたくさん読んだほうがわかりやすいと思います。これは外国語の勉強の仕方の話になるし、Hさんは超上級者だから、こんなことは釈迦に説法と思っていたので、言わなかったのですが・・・たぶんHさんはすでに実践されていると思うのですが・・・一応、わたしが役に立つと感じている方法をご紹介します。

わたしの場合、新しい単語に出会ったとき、辞書を引いて意味を見るのではなく、むしろ辞書に載っている例文に注目します。また、たいていの場合、辞書の例文だけでは意味を把握しきれないし、言葉というのは「使い方を知る」ことが大切なので、実際にその単語がどのように使われているかを知るために、グーグルで検索します。

たとえば、今回の「出方」をグーグルで検索してみました。

敵の出方論
http://goo.gl/wRKnE

TPP事前協議/出方見極め参加方針再考も
http://www.kahoku.co.jp/shasetsu/2012/02/20120212s01.htm

「北朝鮮大使、野田政権の出方見る」

こんなふうに見ていくと、「出方」は「態度」よりも限定的な使われ方をしていることがわかってくると思います。

外国語を学ぶとき、学習者は言葉の「意味」を知ろうとします。でもHさんもこれまでこういった質問を日本人にしたときに、日本人が理路整然と意味を説明できない場合が多いことに気づきませんでしたか? 日本語を母国語とする人は、「出方」の「意味」を知っているというよりは、「出方」の「使い方」を知っているのです。「使い方」がわかっていれば、「意味」を知っているのと同じことだと言ってもいいかもしれないです。だから意味を訊かれたとき、日本人はよく例文を出します。「その単語は、このような場合に使われますよ」と説明するために。

このことは、Hさんが韓国語の意味を日本人に説明しようとするときでも、同じではないですか? だから「出方」の「意味」を、韓国語で理路整然と説明できなくてもいいのです。「出方」をどのような状況で、どのように使うかがわかっていれば、ネイティヴと同じように「出方」を理解していると言えると思います。
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Hさんは天声人語のような硬い文章からくだけた日本語まで読めるし、書ける上級者です。それに、感性がとても豊かで、Hさんが書く日本語のエッセイは、そのまま日本の雑誌に掲載しても固定ファンがつくだろうと思わせる内容です。韓国語を学んでいるわけではないわたしがHさんの日本語を読んで添削しているのも、彼女の文章は読んで楽しいし、はっとさせられる内容も多いからなのです。人の心を動かす日本語を書く人なのです。

Hさんは「出方」と「態度」に関する質問をしたあとで、「韓国語にはない日本語表現を勉強するときは、子供に戻ったつもりで、新しい感覚を受け入れようとしています」と書いていました。

Hさんの日本語に不自然さがないのは、新しい視点を子どものように受け入れようとするHさんの素直さのおかげなのかもしれないなあ、と思いました。

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プロフィール

May

Author:May
翻訳家。フリーランスになって24年。出版翻訳専門。京都府在住。

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