翻訳家による翻訳できない言葉の話

日本語と英語の狭間で呻吟し、言葉を超えたものに思いを馳せる翻訳家のエッセイ

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お疲れさまは英語でなんて言う?


「お疲れさまは英語でなんて言いますか?」と日本人に訊かれて、「そうだね、お疲れさまはGood jobが一番近いかな」などと教えるネイティヴスピーカーがいます。尋ねた日本人は、ネイティヴスピーカーの言うことだから正しいにちがいないと思っていますので、「お疲れさま」は英語ではGood jobなのだと信じます。

 教えるネイティヴスピーカーに悪気はないのでしょう。親切な方なのだと思います。でもわたしなら、同じ質問をされたら、「英語では、お疲れさまとは言いません」と答えます。

 お疲れさまという表現を、日本人はどういうときに使うでしょうか? まず思い浮かぶのが、職場から帰ろうとするときではないでしょうか。「お先に失礼します」と言って帰ろうとしている同僚に、「お疲れさま」と言ったりします。

「お疲れさま」がGood jobなら、帰ろうとしているネイティヴスピーカーの同僚に、Good jobと言うのでしょうか? Good jobと言われたら、同僚はきょとんとするでしょう。通じない日本人英語の典型的な例です。「お疲れさま」を直訳して、You must be tiredと言うのと、大差ありません。

 もう一つ、「お疲れさま」がよく使われる状況は、宅配便の配達などをしてくれた人や、出入りの業者さんに声をかけるときではないでしょうか。「ご苦労さまと言うのは失礼にあたるから、お疲れさまと言うようにしている」という人が、けっこういると聞きます。

 海外で暮らしていて、荷物を届けてもらったとき、配達の人にGood jobと言ったら、これまた相手はきょとんとするでしょう。けなし言葉ではありませんから、言っても悪くはないですが、場違いな表現です。

 ほかにどういうときにお疲れさまを使いますか? なにかの打ち上げのとき。打ち上げ会で乾杯するときなどに、「お疲れさま」と言うかもしれません。ジョッキを掲げて、乾杯しながらGood jobと言ったら、これまたネイティヴスピーカーはきょとんとするでしょう。

 では、どうすればいいのでしょう? 答えは簡単です。日本語をいちいち英語に翻訳しようとするのをやめればいいのです。日本人が、日本の文化のなかで口にする表現を、英語に持ち込もうとするのをやめることです。

 むずかしいことはなにもありません。英語圏の文化のなかで、それぞれの状況ではどのような英語表現が使われるのかを学んで、それをそのまま真似ればいいだけです。思考力すら必要ありません。物真似でいいのですから。

 先に帰る同僚に声をかけるという状況のとき、英語圏の人なら、ByeとかSee youとか、週末の休みに入るのであれば、Have a nice weekendとか言うでしょう。「お疲れさま」とは、なんの関係もありません。

 荷物を届けてくれた人には、Thank youと言いましょう。

 打ち上げの席で乾杯するときには、Cheersでいいでしょう。乾杯という意味です。

 こういうことは、英語表現を文脈とセットにして学べば、すんなり身につきます。ドラマのDVDを観ることをお勧めしたのもそのためですし、ラジオの英語講座なども、ちゃんとストーリーや場面があって、それぞれの場面で使われる英語表現を教えてくれますので、それを素直に学べば、「お疲れさまは英語でなんて言うのだろう?」などという、不毛な疑問に頭を悩ませる必要がなくなります。

 英語を学ぶことを、自分でむずかしくしている人が多いような気がします。英語を母国語としている人たちが使っている英語表現を、簡単な表現から順番に一つずつ、繰り返し口に出して真似をし、慣れて憶えていけばいいだけのことなのです。

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プロフィール

May

Author:May
翻訳家。フリーランスになって24年。出版翻訳専門。京都府在住。

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